鼻の働きは、大きくわけて2つあります。
昨日は、1つ目の吸気の空調のお話でしたが、
もう一つの働きは「嗅覚」、つまり、においを感知することです。
鼻腔には、においを感知する細胞があり、
空気中の化学物質に反応すると、その刺激が
鼻腔上部の嗅球(きゅうきゅう=においを感知する神経系)に伝えられ
においとして認識されます。
脳は、嗅球からのにおいの情報を解釈し
その種類や強さなどを判断します。
嗅覚は、感染症やアレルギーといった疾患によって
障害をうけます。
この疾患で、鼻腔の中に、ポリープができると
においが届きにくくなり、嗅覚が衰える原因になります。
嗅覚障害があると、食事の味が薄く感じられるため
食欲不振や栄養不良につながることがあります。
また、ガス漏れや火災などの周囲にある危険な状況に
気付かないことがあります。
嗅覚は、五感の中でも、最も強く記憶や感情と結びついています。
例えば、太陽を浴びた布団のにおい、花火の煙の匂いから
あなたは、何を感じますか?
香りは、特定の場面や体験を思い出させると同時に
時に情動的な反応を呼び起こします。
感情や記憶の一番そばにある五感が嗅覚であり、
このことは嗅覚が様々な脳の部位と結びついていることを
示しています。
つまり、においには、脳に働きかける力があります。
嗅覚は加齢によっても自然に衰えてきますが
近年、サルコペニア(筋肉の衰えによる身体機能の低下)や
アルツハイマー型認知症といった、いわば老化が早く進みすぎる疾患の
患者様では、嗅覚の低下を伴う場合が多いことが判ってきています。
サルコペニアについては、嗅覚の衰えによる食事量の低下と
関連があり、認知症では病気の進行によって早くから障害を
受ける脳の部位(海馬=記憶を司る器官)が、香りと記憶の関連付けを
司っているからであると考えられています。
これらの疾患では、嗅覚障害は発症に先立って、現れます。
特に認知症では、90%以上の方が症状の初期段階で嗅覚障害を
示すとの報告があり、嗅覚障害が認知症の早期発見につながる可能性が
期待されています。
また、嗅覚を刺激する、つまり様々の香りを嗅ぐことで
認知症の進行を遅らせることができそうだといったことも
分かりつつあります。
嗅覚は聴覚や視覚に比べると、軽視されがちですが
特に高齢者の健康と密接なつながりがあることが
次第に明らかになっています。
しっかり鼻呼吸して、においを感じる毎日を送りましょう!
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